ヴァイオリンの価格

適正価格ということ

価格 金額イメージ

高額ヴァイオリンを扱う海外のディーラーは余程安く仕入れられる場合を除いてほとんどが委託販売です。相場の価格が売主の希望価格である場合が多く、その希望をある程度叶えた金額でないとなかなか成立しません。高く売れると言って預かっているディーラーも多いようです。売主側も本気で売るつもりがないものも少なくないのかもしれません。そういう取引の場合、価格も比較的高止まりの傾向にあります。即金払いを条件に交渉できる場合もありますが、あまりにも高額の場合は購入しません。そもそもどうしても欲しい本当によい楽器というものがなかなかないものなのです。30本見て1本あるかないかの世界ですので余程のことがない限り無理して購入することはありません。

当社の場合は委託販売はしていません。買取もすべて現金もしくはその場で銀行振込で行います。やはり現金(即金)というのは非常に強いのです。仕入れはすべて適正価格の範囲で売主と交渉し、納得の上で購入した楽器ばかりです。法外な価格で手に入れたものがないので適正な価格で販売できるのです。売主の方も即金ならばと手放してくださるケースも多いのです。買取業務を続けておりますと、非常に稀ですが本当によい楽器、どうしても欲しい楽器に出会うこともあります。そんな時は少々高くても買い取る場合もありますが、これは本当にまれなケースで、ほとんどの場合適正価格を守っています。買取をしている以上、状態のよくない楽器が持ち込まれることも多いのですが、どんな楽器でも相応の価格で買い取っています。一般の方々からも買取をし、仕入れの間口を広げることでなかなかめぐってこない本当によい楽器に出会う確率を高める努力をしているのです。

なぜ現金で買い取るのか

現金取引で実績を積み重ねています。即金支払い、適正価格買取が評判になれば、持ち込みも増えてゆきます。ホームページ以外では特に広告も出していませんが、あの店は本当に買い取ってくれた、思ったよりいい値段で買い取ってくれた、など口コミで評判が広がりおかげさまで買い取り数も増えています。まさに口コミと実績の世界だと思います。少ないチャンスでよいものをリーズナブルに買えることなどまずないということです。

委託販売の楽器店の場合は、売主の意向がより強く働きますので相場より高くなる傾向が強いです。販売店は結果的に高く販売することにもなり、お客様には必要以上に高い買い物をさせてしまうことになりかねません。結果的に満足度も低く、販売店としての評判に関わります。事業者は日々精進し、適正な価格で売買することを心がけることが肝心です。

よい楽器は逃さない

本当によい楽器はそう簡単に見つかるものではありません。ですので一旦見つけてしまうと何としても手に入れたい気持ちになります。そしてやっとの思いで手に入れることに成功したとしても、その楽器がすぐに売れるとは限りません。でも大丈夫なのです。本当によい楽器、200~350年を経た名工の秀作で状態のよい楽器ならば、世界中のどこかに必ず探している人がいますので、確実に売れるのです。そのためには確実に売れる楽器を仕入れることが重要です。売りやすいからではありません。その理由はお客様にも直接関わってくることだからです。例えば今お客様が楽器を購入したとします。それを40年後に手放そうと思った時には当店はないかもしれません。それでも、その時代の信頼できるディーラーに持ち込むか信用のおけるオークションに出品すれば適正な価格で売れます。そのような確かな商品を吟味して提供する、こうした積み重ねがお客様の満足につながってゆくのです。ヴァイオリンは何百年も生き続けます。本当によいものは後世に受け継がれてゆくものなのです。

工場製品や量産の楽器について

現在でも大量の新しいヴァイオリンが生まれています。中でも中国やルーマニアなどの工場で日々量産されているヴァイオリンも多くあります。そうしたヴァイオリンは注文すればいくらでも生産されるものですので、当然ながら骨董的価値はありません。しかも工場製品の再販市場はほとんど確立されておらず、正直十分な値段が付けられない状況です。中古市場としての商品価値が認められていないのです。ですので、買取の場合も売主様の希望する金額に至らない場合が多いのが現状です。

ただし同じ量産ヴァイオリンでも、1880~1910年くらいまでのドイツやフランスの量産品に関しては、それなりの評価が認められる場合が多いです。量産とはいえ現代のような機械がない時代ですので、例えばスクロールだけを作る人、F字孔だけを彫る人などと、部位毎に分業して組み立てられた手工品には違いないからです。現代の量産品とは明らかに趣が異なるのです。

ヴァイオリンの価格は上がり続けるのか

バイオリンの価格変動 世界

ヴァイオリンの価格は上がったと言われます。正直言うといつまでも上がり続けるとはあまり言いたくはありません。ヴァイオリンは欧州で生まれ、その後アメリカや日本へと拡がってゆきました。今後はさらにアジア、特に中国、インド等へも需要は拡大してゆくことでしょう。しかしながらオールドヴァイオリンの絶対数はそもそも限られており、状態のよいものは少しずつ減少していくことを考えると、よいものの価格が今後値下がりすることはあまりないかもしれません。少なくとも物価上昇分程度は上がり続けていくものと考えられます。

ディーラーの役割

高級ヴァイオリンの販売は実は誰にでも出来ることではありません。何十年も研鑽を積み経験を積み重ねたディーラーだけが安定した販売を続けられるのです。私たちはヴァイオリンの価値を正しく見極め守っていく役割を担っているのです。

よくある話ですが、過去に巨匠が使っていた楽器、或いはその弟子が使っていた楽器、だから間違いないと鵜呑みにすることです。これは本当は危険なことです。仮にヴァイオリンの名手であっても、ヴァイオリンの鑑定眼があるかどうかはまた別の話なのです。先入観のない澄んだ目でヴァイオリンを見極めることが出来るディーラーという職種が正に必要なのです。