本物へのこだわり

ヴァイオリン商としての覚悟

バイオリン展示

この仕事を始めた当初は一年に何度も欧州に足を運びヴァイオリンを買い付けては弦楽器専門店に販売する輸入卸商が専門でした。

最初から高級ヴァイオリンを扱っていたことで、専門店以外にもお客様に直接販売する機会もありました。高級ヴァイオリンとはいわゆるイタリアンオールドヴァイオリンのことです。たいへん高価な、時には億単位ものヴァイオリンを購入されるお客様は、相当の愛好家やプロ奏者、会社の経営者など様々ですが、いわゆる成功者と言われる方々も多かったのです。普通はなかなかお話しする機会もないようなそのような方々から、直に営業に対する姿勢やノウハウなどを教示され、また人生の先輩としての貴重な意見などを常に吸収し勉強させていただけたことが転機になりました。そうした方々は見識眼も高く本当に良いものは見逃さない。 そしてこだわりも強く、それこそストラディバリウスのような名器を所有したいという方々も多いのです。こうしてお客様から教えられて成長することができましたし、そのことでより一層オールドヴァイオリンに対して興味を持つこともできました。それがオールドヴァイオリンを扱う仕事を続けるきっかけというか真相です。

オールドヴァイオリンの取引は高額で営業的にも大きなチャレンジです。そればかりでなく、本当によいものを扱えば世間から賞賛され評価も受けます。よい評価を受けるほどにオールドヴァイオリンの世界がどんどん面白くなってゆき、無我夢中で何十年オールドヴァイオリンを専門に扱う商売を続けるうちにこの世界に骨を埋めることを決心するに至りました。

本物は裏切らない

オールドヴァイオリンとは何かと言えばイタリアの巨匠が今から200~350年前に製作したヴァイオリンということになりますが、同じ作家の作品でも、秀作かどうか、またコンディションやクオリティによってその価値は大きく違ってきます。価格もそれ次第で5倍以上の開きがあります。

オールドヴァイオリンというだけで千万単位の大変高額な商品です。そんな商品をお客様に提供する訳ですから、その中から本当によいもの、できる限り秀作でクオリティの高い商品をお客様に提供したいという思いが非常に強いです。そうなると当然ながら同じ銘柄でも上限に近い価格の商品を購入することが多くなります。お客様に提供する価格も当然高額になるわけですが、それでも本当によいものを提供したほうが最終的には上手くゆきます。結果的に評価もついてきます。その訳のひとつはお客様の満足度が高いからです。購入する方も当初は高い買い物かしれませんが、何十年と所有するうちに満足度が増してゆくのです。オールドヴァイオリンにはそれだけの力があるのです。本当によいものは決して裏切らないのです。そして時には、さらによいものを購入しようというお客様もいらっしゃいます。この仕事を続けていると、本当に素晴らしい名器を手になさる幸せな場面に立ち会う機会も少なくありません。

本物にこだわる理由

バイオリンの鑑定書

本物ならば何でもよいわけではありません。

例えば割れが多く状態の悪い楽器を売ってしまったりすると、欧州と違って高温多湿な日本では、冬は調子がよいが暖かくなるときまって調子が悪くなるといったこともないとは言えません。お客様は高額を投じて購入した楽器に満足できなくなり、当社は信頼を失います。そうなるとお互いに不幸です。

そうならないために少々高くてもできるだけコンディションのよい楽器を仕入れる努力をしています。結果的にお客様の満足につながりますし、販売店としての評判、実績にもなるからです。

オールドヴァイオリンはある意味骨董の世界なので、適正価格で取引できる条件が揃った楽器を手にいれることが非常に難しい。正直なところ本物かどうかわからないが、鑑定書に「~と言われているヴァイオリン」を取引しているケースは非常に多く、つまり「My opinion、私の意見では~〇〇」ということもよくある話です。例えば500万円で販売する楽器は500万円の価値があるのが当然ですが、実はそうでない場合が往々にして起こり得るのが骨董の世界です。実際にそんなヴァイオリンを購入している人も非常に多く、長年所有するうちに、何か違うと気付かされることになり、結果的に本当の満足が得られないことも多いのです。実際そういうことを続けているディーラーは信用されません。それどころか信用を失ってしまい事業を存続できなくなる、そんな怖い世界なのです。